研究背景
近年、国内外の核融合スタートアップ企業をはじめとして、核融合炉の早期実現を目指したさまざまな取り組みが行われています。核融合炉を実現するための学術研究や技術開発と並行して、核融合炉の安全性に関する議論も行われています。核融合安全性研究の対象範囲は広く、研究内容は学際的です。そのうちの一つとして、第一世代の核融合炉で燃料として使用される三重水素(トリチウム)は、放射性同位元素であることや移動性(拡散性)が高いことから、分離・回収・除去・測定・閉じ込め・安全取扱に関する研究や技術開発、施設から環境に放出されるトリチウムの挙動理解、環境から生物への移行過程と生物影響に関する研究が求められています。この安全性課題の中で、トリチウムの環境生物影響に関する研究は、核融合炉の建設・運転に係る合意形成や、ステークホルダーの理解を得る観点から重要な課題です。
環境中に存在する重水素や天然のトリチウムは、地球環境における水循環を理解するためのトレーサーとして広く活用されています。トリチウム挙動の理解は、核融合研究施設を含む原子力施設周辺のトリチウム影響を評価する観点から安全性にかかる重要な研究課題の一つです。また、トリチウムは放射性物質であることから、環境から生物への移行と生体への影響理解も安全性の観点から必要な研究課題です。本プロジェクトの特徴は、環境トリチウム研究とトリチウム生物研究の研究者が連携し、環境挙動から生物影響研究までを一気通貫に取り組むことにあります。このような環境影響研究と生物影響研究を融合したトリチウム研究は、海外でも取り組まれていない日本独自の稀有な研究です。