研究背景

 核融合炉内は、高流束な熱・粒子の流出入、高速中性子の衝突、材料界面の化学反応などの様々なエネルギーと物質粒子が輸送される環境となります。そのため、核融合炉の炉壁では、材料を長時間健全に維持するだけでなく、炉心プラズマへの影響を考慮した粒子バランス制御が必要です。

物質中を超高流束のエネルギーと物質粒子が輸送されると、物質の構造が非平衡状態となります。すると、非晶質や準安定化合物(準安定相)、結晶格子欠陥を含む構成原子集団の自己組織化による準安定周期構造(散逸構造)が出現します。材料を介した物質・エネルギー輸送がもたらす自己組織化構造の制御や、不均一で多様なメゾスケール構造と強度等マクロな材料特性との相関の理解は未だ乏しく、大変興味が湧く新領域の課題です。このような物質構造の変化機構を明らかにすると共に、それに伴うエネルギー・粒子輸送挙動の予測性能を高めることで、核融合炉内の物質循環の制御が可能となります。