研究背景
将来の核融合炉の装置壁近傍では、燃料である水素ガスの圧力が、現状の装置に比べて1~2桁ほど上昇すると予想されています。また、閉じ込めプラズマの密度と温度の上昇や、周辺プラズマにおける多価イオンの発光に起因する光の量が増大することが考えられます。これらの結果として、装置壁近傍の中性粒子ガスと光の相互作用(光電離、光励起など)が促進され、原子・分子過程を介して、プラズマ運転に影響があると考えられています。しかし、この点に着目した研究はほとんど未着手のままです。
一方、星間空間や星形成領域では多くの有機分子が観測されており、これらは宇宙における生命の起源になり得ると考えられています。これら有機分子の化学進化において、星間放射光や宇宙線などが光誘起反応を通して重要な役割を果たしています。また、生体関連物質の多くは左右の鏡像異性体の内どちらか片方のみから構成され、これは地球上のあらゆる生命関連物質に共通の現象で「ホモキラリティー」と呼ばれています。「ホモキラリティー」は生命の起源に関連した重要な未解決問題となっており、宇宙における偏光が「キラル分子」の選択的な光分解を起こした結果ではないかとの説が提唱されています。
本プロジェクトでは、これら核融合と宇宙における現象を様々な波長(真空紫外、可視、赤外領域)の光と物質の相互作用として捉え、異分野の研究者が協力することで新たな知見を獲得することを目指します。